八田さんの依頼で制作した人形の小道具  

紙芝居おじさんの自転車

 

 テレビがまだ普及していなかった昭和30年代。浜益にも紙芝居おじさんがやってきて、子ども達は大喜び。
 おじさんは、荷台に紙芝居の舞台をくくりつけた自転車を、浜益丸に積んで小樽からやってきました。
 そんな紙芝居おじさんの自転車を作りました。

 昭和の実用車らしい太くてごついフレームを作ります。ジグを作り、真鍮パイプを固定して、ていねいにハンダ付けしました。

 

   車輪周りは苦労したところです。ハブは銅パイプと銅版をハンダ付けして作ります。問題はリムをどうやって作るかでした。考えた末、灯油タンクにつなぐ銅パイプにディスクグラインダーで割りを入れ、ペンチで開いて、型にしました。スポークは2mmの銅線です。それをハブとリムにジグを使って固定し、ハンダ付けします。シルバーに塗装すると、いっきにそれらしくなりました。

タイヤもちょうどいい既製品はないので、考えました。これもストーブにつなぐ灯油のゴムホースを使うことにしました。ちょうどいい長さに切った後、内径がぴったり合うタケバシでつないで輪にしました。その後、じゅうたんの下に入れるゴム製の滑り止めを貼り付け、黒く塗装しました。
 もっと難しかったのが泥除けでした。なかなか素材と工法を思いつきません。
 「この手があったか」と、ひらめいたのは庭

で焼肉を食べていたときでした。七輪に炭を入れる青い「火挟み(ヒバサミ)」が答えでした。ちょうどいいアールと幅の火挟みを、物置にあった一輪車(ネコ)のフレームに押し付けて整形すると、まるで注文したような泥除けが完成しました。

 その後、ハンドルやブレーキなどの部品を作り、固定していきました。サドルは銅版を整形し、もっともらしいスプリングを付けたあとで、皮を張りました。ハンドルは木を削って、ゴムのような雰囲気を出しています。予想外に難しかったのは、実用車らしいスタンドです。ちょうどいい形状のスプリングを入手し、アルミの平角をあえてリベット留めして雰囲気を出しました。
 

  慣れない金属加工が終わり、紙芝居の舞台づくりです。薄い材料を使いながらも、必要な強度が出るように設計しました。手慣れた木材加工は快適に完了しました。
 

  マーク類を付けて完成させます。当時の実用車のヘッドマークを調べていると「富士自転車」のマークが目に付きました。浜益に展示する自転車には、山のマークがぴったりです。「黄金山」をモチーフにマークをデザインし、「黄金自転車工業浜益号」「koganezitensya hamamasu」などの文字を透明シールにプリントし、貼り付けました。
 

 
 簡単にできると思って作り始めたのですが、製作期間は1ヶ月に及び、時間と労力から二度と作ることはないだろうという労作になりました。
 木工作品は、全て寄付してきたのですが、これだけは手放す気にならず、今も我が家の居間に置いています。

 

馬車

 

 八田さんとのコラボ作品の始まりは馬橇作りでした。八田さんがお孫さんのいる北見で馬の人形を見つけ、馬橇を引かせたいとを考えたそうです。依頼を受け、造材山のバチバチと花嫁さんが乗ってきた馬橇をつくりました。たくさんの方が「昔は確かにこうだった」と懐かしんで下さり大変好評でした。
 冬が終わると、いつまでも馬橇を飾っているわけには行きません。
「校長先生。馬車作ってもらえないべか」と、当時は言いにくそうだった八田さん。
 馬車はかなり難易度が高いことが予想できましたが、こちらも断ることはプライドが許しません。馬橇の調査をした北海道開拓の村の旧藤原車橇製作所を再訪し写真を撮り、多くの関連資料を調べました。実は、とても役に立った本は、「手仕事 イギリス流クラフト全科 ジョン シーモア 平凡社1998年」でした。細かの構造から熱した鉄輪による締め付けまで、詳細な情報を入手することができました。
 八田さんとのコラボによる小道具づくりの面白さに開眼した記念すべき作品になりました。

 高精度のルーターテーブルをフル稼働させなければ不可能な作品でした。 

  

 

脱穀機と唐箕 プラウと

 

 

 農機具もたくさん作りました。浜益は漁村のイメージが強いのですが、浜益川沿いに広がる豊かな農業地帯としての一面も持っています。助かったのは、実物が地域に残っていたことでした。

 例えば、田起こしに使われたプラウ。写真や資料で表側の形はわかるのですが、裏がどうなっているのかは、どうしても実物をひっくり返さないとわかりません。飲み会の時に「どっかにプラウないかな」とつぶやくとすぐに、「しばらく見たことないけど、納屋のどっかにあるわ」と探してくれるのです。

 人形の小物作りは、かけがえのない地域人脈づくりにつながりました。

 

 写真上段の足踏み式脱穀機はオルガンのようなペダルを踏むと実際に回る仕掛けを作りました。唐箕も風が起きるようにしているため、米ともみ柄を上から入れるとそれなりに分離することができました。大人げなく、子どもたちに自慢してしまいました。

 

 

楽しい小物作り